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文・著作権 鈴木勝好(洋傘タイムズ)

Y O U G A S A * T I M E S * O N L I N E
◆◆◆ 男の日傘 復活の兆し ◆◆◆



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           男も日傘を持つ時代に    2007年8月25日記
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7月が長梅雨で涼しかった反動でもないだろうが、8月に入ると真夏日(30度以上)
猛暑日(35度以上)の連続・頻発に見舞われ、8月16日には岐阜県多治見市と埼玉県
熊谷市で気温が40.9度に達し、1933年(昭和8)年7月25日に山形市で記録した40.8
度の国内最高を、実に74年ぶりに更新するに至った。



こんな暑さの中で外歩きするのはシンドイ限りだが、日傘(パラソル)をさした女性
たちの姿は、涼しそうであり、エレガントな風情を演出してくれる。プライベート
な日陰の涼を得られる日傘という有益なツールを、男性たちはナゼ利用しないので
あろうか、と常に思っていたのだが(実は街中で日傘を使う男性の姿をたまには見
かけていた)、今夏の猛暑は男性にも日傘の有効性を認めさせることになったよう
である。


朝日新聞8月16日付夕刊の社会面(関東版)に『酷暑で「夏物」やっと本番』の見だ
しで、次のような記述が載っていた。「男も日傘をもつ時代。」西武百貨店池袋本
店の紳士雑貨売り場では、晴雨兼用の傘や日傘を40本程度置いているが、仕入れて
もすぐに完売し、追加発注を繰り返す。」と



紳士用の日傘というコンセプトが新しく企画提案され出したのは、※7〜8年前ほど
だったと記憶するが、ようやくその意図が社会現象の中に定着し始めたのかとも考
えられる。高齢者層の健康面などからも、男性の日傘使用が、社会的にもっともっ
と推奨されていいのではないだろうか。



日焼け防止や紫外線対策として、若い女性にも日傘が注目されるようになり(それ
までは日傘がオバサンの代名詞的なイメージとされていた)、UV(紫外線)防止加工
を施した生地を日傘に採用したのは1990年(平成2)年のことであり、この年、洋傘
業界の春夏向新商品展示会のテーマは「エコロジー」であった。




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          男性の日傘はスカートをはくのと同じ?
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朝日新聞の神奈川版に月一回の位の頻度で米国人らしいパーリット・モーガン
なる御仁が、和文・英文併記で『かながわ見聞録』なるものを寄稿している。
その8月15日掲載分は「日傘」がテーマで、副題は「優雅な世界に思いはせ」。



文章の冒頭で「日傘を差している女性は、夏の快い風物詩に思う」と述べ、元町
(モトマチ・横浜市)の街角に立って、日傘を差している女性の観察などをし、市内
の傘店で事情ときくなどしている。その彼を客と間違えた店の人は、「申し訳あり
ませんが、男性用の日傘は置いてありません」とつけ加えたとのこと。そして、一
文を次のように結んでいる。



「この優雅なアクセサリーを私が使う姿が頭に浮かび、のけぞりたくなった。男性
がスカートをはくのと同然だからだ。」と



男性が日傘を差すのは、スカートをはくのと同然…という認識(イメージ構成)に
興味がもたれる。

かつて西欧で傘を使う男は女々しいと思われ、1750年代にロンドン市内で傘を
差して歩き、人々の嘲りや悪戯の対象にされたジョナス・ハンウェイ(後に彼は
英国紳士の先駆者と評価される) の例があり、ハンウェイと同時代のある人物は、
傘を差して出掛けた訪問先で、「頭のうえにペチコートをぶら下げるような軟弱
な男は許せない」と言われて門前払いされたという話もあるようだ。



欧米人男性の脳細胞の古層部分には、傘は女性が用いるもの、といった固定観念
が今に残存しているのであろうか。欧米系の男性が雨の中で傘を差さずに平気で
歩いている姿は、ある種、奇異な印象はしないこともないが、彼らとしたら、
頑として男を主張している姿勢の一端なのかもしれない・・・。



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         日本人にとって洋傘は晴雨兼用だった
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日本の鎖国体制が崩れ、安政の開港が行われると、欧米の文物が盛んに流入し、
やがて明治維新下の文明開化潮流に乗って、人々に舶来品が広く受け入れられ
た。西洋傘(洋傘)もそうした流行品の一つであった。



武江年表慶応3年の条に「此頃、西洋の傘を用ふる人多し、和俗蝙蝠傘といふ、
但し晴雨とともに用ふるなり」とあり、また、甲斐絹屋・古谷正平が明治40年
に著した解説本では、「これが流行を見るに至りしは明治7、8年の頃に属す。
・・・社会の全般を通じて流行し、晴雨に拘らず使用携帯の便なる。実に一日
も欠く可からざる用品となれり。」と説明している。



当初は雨傘としてより(防水加工技術の問題もあり)、日傘として重宝された
ことが当時の風俗図などからも見てとれる。男性の日傘は、明治・大正・昭和
そして戦後しばらくまで、かなり使用されていたのである。



日本の男性にある日傘使用のDNAが、再び復活する時機を迎えているのかも
しれない。                    




                                (鈴木勝好)










※本文脚注
1999年、若い年代層も持てる新たなコンセプトで「男の日傘」をリリースし、魁と
なるム―ヴメントを起こしたのは、当サイト 心斎橋みや竹kasaya.com 店主である。




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